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30 塩尻宿〜29 下諏訪宿  長野県塩尻市〜長野県下諏訪町

 その国道153号は、飯田経由で名古屋まで続く道。右手に脇本陣と本陣の碑がセットであった。

 塩尻宿は、中山道と飯田方面への街道、伊那街道(三州街道)の分岐点。飯田からは長野と愛知の県境を越え、 東海道の岡崎宿(愛知県岡崎市)や吉田宿(愛知県豊橋市)、あるいは飯田街道を通り名古屋(美濃路名古屋宿)へ行くことができる。

 そして、現在の国道153号はこの伊那・飯田街道を踏襲している。

 現在も先ほどの第1・第2通過ポイント(塩尻駅と国道19・20・153号分岐点)のように、道路や鉄道のキーポイントのなっている塩尻。 宅配便などを運ぶ、運輸企業の一部が塩尻に拠点を置いている。

 この道は、交通量がそこそこ多いのに道幅が狭い。 本陣跡の他にも高札場や小野家住宅という元旅籠の家の前を、車の邪魔にならないように軽く見ていく。

 さて、次の下諏訪宿へ行くには、国道20号に出なければならない。すぐ旧中山道を示す目印があったので、そちらへ道を変える。

 この道はキツかった。普通の住宅街を通るのだが、道の傾斜が6%前後で、それが2kmほど続いた。 普段はそんなに大変な道ではないのだが、4日連続で走っていて荷物も持っていることを考慮すると実際より斜度が大きいと感じた。 所々自転車を押す羽目になった。

 立派な家が並んでいる集落を過ぎ、中央自動車道のみどり湖PAを上から見下ろす。そして無事国道20号に出ることができた。 ここで一時休憩する。前日中山道中間地点でオバサンにもらったお菓子、そして洗馬で汲んだの邂逅の清水で一服。

 さすが二桁国道。交通量は多い。ただ、歩道がしっかり整備されているので、車を気にせず走ることができる。 ただ歩道に所々雪があり、そこだけ車道に出なければならなかった。

 塩尻から既に200m近く上ってきた。疲れが残っている中の上りはけっこう大変。 岡谷まで7km、そして諏訪(上諏訪)まで14km。平地なら大した距離ではないのだが、なかなかその距離が縮まらない。

 それでも歩道・登坂車線を行ったり来たりして進むと、やがて「登坂車線終り」の標識が見えてきた。上りは間もなく終わる。

 とうとう塩尻峠に到着。何気にこの旅初の1000m超え。雪が少し積もっている。 前方に見える雲が少し黒いが、太陽は出ている。 塩尻より確実に気温は低いが、上ってきたので大して寒くない。 むしろ下りで風が直に当たるので、ここから体温を奪われてしまう。 心情としては嬉しいが、寒い時は下る覚悟も必要だ。

 なお、旧中山道の塩尻峠は新道の塩尻峠より少しだけ北にある。そちらも自転車は走ることができる (傾斜は新道以上に大変なので、体力に自信のある人だけそちらを通るといいと思います)。

 塩尻峠から一気に坂を下る。寒くて精神力もいるが、体力は一切いらないのはありがたい。

 上から見下ろす諏訪湖・そして岡谷と下諏訪の街は輝いていた。 湖は琵琶湖以来目にしてないし、その琵琶湖も海のような大きさなので、湖という意識はなかった。 景色を楽しみつつ、事故を起こさないように下っていく。

 しかし、高地の天気は変わりやすい。あれよあれよという間に、上空は黒い雲で覆われてしまった。 そして、雪が降り出してきた。風も強く、顔に雪が当たって冷たい。というかむしろ痛い。

 中央自動車道の岡谷インターを過ぎた所で、奥の手の防寒対策をすることに。 ヘルメットの下にニット帽をかぶり、口元から首までネックウォーマーをつける。 念のため持っていたものまさか登場させることになるとは……正直これを使うことになるとは思わなかった。

 万全の態勢で、再び国道20号をひたすら進む。ほとんど力なくとも、平地以上のスピードが出る。

 あっという間に下諏訪駅の近くまでやって来た。 その先の旧道には、右から読んで「中山道下諏訪宿」という白い提灯が冠木門(かぶきもん)にぶら下がっていた。 冠木門を見たのは滋賀の愛知川宿以来かもしれない。

 道の突き当りは、中山道で特に重要な地点の一つ。その名も「中山道・甲州街道合流点」。 「甲州道中・中山道合流之地」という黒い石碑がある。

 とうとう決断の時がやって来た。ここから中山道をそのまま走るか、それともここから甲州街道に切り替えるかを決めねばならない。

 風が強くなり軽く吹雪いてきた。外では正しい判断はできそうもない。 落ち着くため、目の前にあった「茶房まどか」という喫茶店に入る。

 喫茶店の中は、かなりレトロな雰囲気だった。あったかーいお汁粉(=関西でいうぜんざい)を注文する。 出来るのを待っている間、店主に和田峠方面(国道142号)の情報を聞く。

 「ここでこんなにも雪が降っていると、上はもっと吹雪いているだろうなぁ」
 「道路状況はどうですか? 雪積もってますか?」
 「路肩は当然積もっているな。道路には雪はないけど、日陰は凍っているかもな」

 そんな会話をしているうちに、お汁粉が運ばれてきた。小豆の甘さが心に沁みてくる。 そうすると、冷静な判断が出来るものだ。そして決断する。 お汁粉も美味しく全て食べ終え、店主にお礼を言って店を出た。 目の前には、やはり「甲州道中・中山道合流之地」の石碑がある。

 標高1500mを超える和田峠。ここ下諏訪から、さらに700m以上も上らねばならない。上の天気など想像できない。 そして凍った路面では、下るのに命がいくつあっても足りないだろう。 残念だが、今回は和田峠越えは諦めざるを得ない。 中山道後半はまたの機会にすることにして、ここからは甲州街道を進むことにした。


〜中山道(前半)・甲州街道自転車旅〜  甲州街道 上諏訪宿方面へ


※ 8か月後(11月)の中山道自転車旅後半の記録はこちら↓から

〜中山道(後半)自転車旅〜   中山道 和田峠方面へ


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