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25 日坂宿〜24 金谷宿    静岡県掛川市〜静岡県島田市(旧金谷町)

 しっかりと道の駅で休憩した後、出発する。すぐ行ったところに、 遠江国で一番格式が高い神社の事任(ことのまま)八幡宮がある。 ここが日坂宿の西の入り口だ。「ことのまま」とは、「願いが思った通りになる」という意味で、 小夜の中山の西にあったことから江戸時代にも旅の安全祈願などのために立ち寄ったらしい。 自分も例にもれず、自転車旅の安全を祈願する。

 対向車線を小夜の中山を越えてきた同業者が颯爽と下ってきた。 手を振ってくれたので、振りかえす。上りは当然スピードが出ない。 ちょっとでも速く走れればその分上り坂にかける時間が少なくて済むのは分かっているが、 それはなかなか難しい。

 日坂の集落が左手に見える。一本中に入れば旧東海道なのだが、この上り坂に気を取られ、 見る余裕がないというのが正直な気持ちだ。旧道には入らず、日坂バイパスの高架の隣をとにかく進む。

 日坂インターを過ぎると、旧道は本格的な山道になった。車通りはほぼ無いので、 どんなにゆっくりでも迷惑はかけないが、やっぱり峠越えは大変だ。 少しでも力を緩めると、自転車が止まってしまう。

 自転車に乗る人は、好んで峠に行く人も多いが、自分はそんな修行の場を求めている訳ではなく、 峠越えは好きではない。峠のほうが平地より涼しいというメリットもあったり、 青々に茂った周りの景色を楽しめるという利点もあったりするので、その辺りを考えると 峠も確かに楽しめるのだが。

 そんなこんなでなんとかトンネルに着く。 トンネルを抜ければ、島田市に入る。ただ、峠自体はまだ半分。 ここからもう一つの上り坂が待っている。

 「自転車でバイパス行っちゃダメだよー」
水を飲んでいると、近くの売店のオバサンから声をかけられる。「はーい」と返事をする。

 この辺りは茶畑が広がっていて、製茶工場もいくつかある。 金谷茶の生産地がここだ。そんな景色を楽しみつつ、頑張って上る。

 東海道新幹線からも見える牧之原台地の茶畑は、実は明治時代以降に開墾されたものである。 昔の大井川の扇状地であるこの地は、元々は米を作るのには不適で、不毛の地だった。 だが、明治時代になって江戸を追われた旧士族などが中心となって開拓をした。 当時茶を植えることが奨励されていたので、そのおかげで牧之原の辺りは現在のような 茶畑が一面に広がる茶の名産地になった、という訳である。静岡県民、気合を入れて語ります。

 茶畑は一時的に見えなくなり、再び森林の中を突っ切っている道を進む。 ひたすら上りでかなり大変だったが、我慢してこぎ続けているとなんとか峠に到着することができた。 数年前に開港した静岡空港まではここを右に曲がって10kmもないとは、にわかに信じられない。 真っ直ぐ進めば、金谷の駅まであと2kmほど。頑張って蓄えた位置エネルギーを 運動エネルギーに変換して、金谷の街目指してスピードを出して坂を下りる。


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