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41 台ケ原宿〜40 韮崎宿 前半  山梨県北杜市(旧白州町)〜山梨県韮崎市

 左手に田畑が広がる道を進めば、道の駅「はくしゅう」に到着する。

 ここの道の駅では、ウイスキーの原料になるような名水をタダで汲むことが出来る。 今朝、中山道洗馬宿で汲んだ「邂逅の清水」も残り少ないので、今日これから、そして明日の飲料水を確保する。

 それから台ケ原宿の見学に行く。台ケ原宿は日本の道100選に選ばれている宿場。風情があると聞いている。

 しかし、またまたドジをやらかす。ここでは迷う要素がほとんどないのにもかかわらず、なぜか迷ってしまったのだ。 きっと何か重大な勘違いをしたのだろうが、今となっては思い出せない。

 とにかく第六感の赴くままに走り回ると、なんとか旧甲州街道に戻ってこられた。

 この近くにも、一里塚があった。江戸まで43里10町という中途半端な距離だが、44番目の一里塚らしい。 石碑に番号が書かれているということは、観光マップでもあるのだろうか。先ほどの道の駅で聞いてみればよかった。

 古民家が立ち並ぶ一本道の旧甲州街道を進んでいく。途中には今となっては御馴染の、問屋場(馬の荷物の受け継ぎ場所)とか脇本陣(身分の高い人が泊まる宿泊施設)の跡があった。 明治になって天皇が行幸した時に立ち寄った記念の「明治天皇行在所」という石碑もあった。これは、今後甲州街道で何度も見かけることになる。

 今日の宿場めぐりはここまで。あとは、今日の宿泊場所まで自転車をこげばよい。 その宿泊場所は、台ケ原宿から10kmほどのところにある旅人小屋。上諏訪でパンク修理をした際に、連絡を入れておいたのだ。

 時刻は既に17時半。この日は春分の日なので、日暮れももう近い。出来る限り急ぎたい。

 しかし、宿泊場所までの道は、スピードを上げるほど余裕のある道ではなかった。 まず目印の、中央本線の長坂駅に向かうのだが、そのためにはひと山越えなければならなかった。

 普段トレーニングなどをあまりしていない体を4日間連続で酷使してきた状況で(ここまでの4日間の総走行距離は450km以上)、平均斜度7%で一気に200m近くも上る急斜面はあまりにもキツすぎた。 実際、上っている途中「これ以上こいでいたら足が攣るな」と何度思ったことだろうか。 しかも辺りはどんどん暗くなっていく。初日の大垣〜岐阜間のようなことは何としても避けたかった。

 どうにか足が攣ることなく上り切り、長坂の町へ下る。旅人小屋は長坂駅からさらに20分ほどかかる。 

 中央自動車道長坂インターの辺りで、すっかり暗くなってしまった。それでも目印のガソリンスタンドの交差点を右折し、闇の中に踏み入れる。 この道が怖かった。田んぼの脇道で街灯などは一切無く、、一度迷ったら朝まで抜け出せない気がした。 自転車のライトのみを頼りに、一瞬の気も緩めることなく自転車を進めていく。

 どうにかこうにか、宿泊場所らしき建物がに着いた。だが真っ暗でよく分からない。 慎重に目的の場所「カフェ チームシェルパ」かどうかを検討して、間違いないと確信してから自転車を停める。

 カフェに入ると、オーナーの奥さんが迎えて下さった。オーナーはどこかに旅に行っているらしく、この日はいなかった。 ここのオーナーは日本を代表するバックパッカー(紀行家)で、旅好きの人なら一度は名前を聞いたことがあると思う。 例えば単独で中国の長江を川下りしたり、大阪箕面〜東京高尾間の「東海自然歩道」約1700kmを全踏破したりと、聞いていてわくわくするような経験をなさってきた方だ (調べればすぐに誰だか分かるので、興味のある人はググってみてください)。

 奥さんが出してくださった、おにぎり3つを夕食として頂く。 本当は今日泊まる他の2人の分も含めた3人分のおにぎりだったらしいのだが、彼女曰くいつまで経っても戻ってこないので全部食べていいと言ってくれた。 実はここの旅人小屋は食料持ち寄りだったが、最低限の行動食しか持っていなかった。そのため、このおにぎりは本当にありがたかった。

 他にもこのカフェには、駄菓子が大量においてあった。駄菓子屋と同じように、購入して食べても良いという。 迷わずお金を払い、動物性タンパク質(スルメの駄菓子)を中心に買い漁り、栄養補給をした。 駄菓子を夕食のおかずにするという、貴重な体験をすることができた(良い子も悪い子もマネしないでね)。

 しばらくすると、今夜一緒に旅人小屋に泊まる社会人の男性2人がやって来た。 話を聞くと、彼らはとある有名な企業に勤めている方で、山梨の大学に通っていた時によくここに遊びに来ていたそうだ。 3連休をどう過ごそうかと考えて、迷った末にまたここに2人で来てしまったのだという。

 オーナーの奥さんに旅人小屋に案内してもらう。コタツあり、暖房ありの8畳一間。 3人が一晩過ごすには申し分ない広さだ。

 社会人のおふたりとテレビを見て、いろいろな話をして、早めに床に就かせてもらった。 明日、本来の予定では東京入りするつもりだったのだが(八王子市内まで)、そんなことを言える体力を明日までに回復することは無理だろう。 まあ明日のことは明日ゆっくり考えればいいか。


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