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35 藪原宿〜34 奈良井宿   長野県木祖村〜長野県塩尻市(旧楢川村)

 藪原宿は、髪をとかす櫛で有名だった。現在でも数軒櫛を売っている店がある。 江戸時代の後期には藪原の家の4分の3がこの櫛に関わる仕事をしていたという。

 旧道を進むと、左手に高札場(幕府のお触れを掲示した場所)の跡の白い碑があった。 周りに古い家はほとんどないが、道には旧街道の面影が少しあった。

 宿場内には、他にもこの白い碑で「防火高塀跡」(土を盛った石垣のことで、防火壁の役割を果たすもの)と書かれたものも見られた。 ただ、おそらく本陣跡にも同様の碑はあるのだろうが、見つけられなかった。

 本当はここ藪原から「鳥居峠」を越えることになる。峠までの距離は3km弱。 もちろん本当の旧道は石畳や登山道なので自転車では通行不可能。 一応その近くに8kmちょっとのダート道があるにはあるのだが、どうせ雪が積もっているだろう。 今回は当然、通りやすさを考えて国道19号の新鳥居トンネルを選択する。

 国道に戻るために藪原神社の近くを通り、自転車を押して住宅の路地の恐ろしいほどの坂を上る。 半分みぞれの雨の中で手足の先の感覚がもうあまりなく、1・2度滑りそうになった。

 木曽国道に戻ってきた。だが、新鳥居トンネルは工事中で、片側通行の状態。 嫌な予感がした。もしかしたら、自転車は通れないのかもしれない……そう思った。 2時間に1本の電車を待って1駅だけ電車に乗るという方法があるといえばあるが、 自転車で走破したい身にとってはその選択はしたくない。

 心配になったので工事のオジサンに聞く。すると、ちゃんと自転車は通れるという。助かった。 ただし歩道ではなく車道を通って行けと言われた。タイミングよく片側交互通行を行けば、問題ないのだという。

 その交通整理のオジサンの指示のタイミングで、トンネル内に入る。 しばらくの間、自動車やトラックは後ろから1台も来なかった。なんて走りやすいのだろうか。 このようなトンネルは、通常自転車は走りづらくて仕方ない。 車社会の世の中、自転車は片隅に追いやられてしまうのだ。

 残念ながら2km弱のトンネルを通り過ぎるまで、車がいないこの最高の状態が続いたわけではなかった。 だが幸いなことに大型車が通らなかったので、あまり問題なかった。トンネル内で雨風を凌げたのも大きかった。

 ただし工事などをしていない通常の時、新鳥居トンネルは絶対歩道を走るようにしましょう。 車道は危険すぎます。時速50km以上出せる自信があるのなら話は別ですが。

 トンネルを通過。文字通り、今日の峠を越えた。 ここから塩尻までは下り坂。 そして、目の前には中山道随一の宿場、奈良井宿が待っている。


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