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34 奈良井宿〜33 贄川宿    長野県塩尻市(旧楢川村)

 間もなく奈良井宿の入り口の看板が見えてきたので、宿場町に入る。

 奈良井宿は、先ほどトンネルでスルーしてきた鳥居峠の直前・直後の宿場ということで、当時は大いに賑わった。 漆器や綰物(わげもの:薄く削った木を円形に曲げて作った容器)などの生産も盛んだった。 建物は江戸末期や明治の代からのものが多く、現在も宿場時代の色が濃く残っている。 観光地としても名高く、中山道で最もメジャーな宿場の1つだ。

 この時の時刻は17時前だったが、ちらほら観光客も見受けられた。店の方はほとんど閉まっていたが。

 ここ奈良井の標高は1000m近い。寒くて寒くて仕方がないので、お茶か何かで一服して体を温めることにした。 まだ開いている、食事が出来る店を探す。

 街並みを味わいつつ北上していくと、右手にまだ明かりの灯った食事処が。「かなめや」という店だ。 さっそく合羽と濡れた靴下も脱ぎ、店に入らせてもらう。 

 店の御主人が、ビチョビチョの自分の姿を見てどうしたのかと尋ねてきた。 いつものように、中山道自転車旅の途中だということを話す。 時刻が遅いこともあり、誰もお客さんはいなかった。

 身体をストーブで温め、濡れた靴下を乾かし、中山道を中心とする会話をしながら、 メニューを見て山菜雑炊を注文した。

 10分ちょっとでお待ちかねの雑炊が。湯気が食欲をそそる。

 体の芯から温まるというのはこのことだろうか。 舌を半分火傷しながらも、山菜・蒲鉾などなど全てをおいしくいただく。 ちなみに、これはあくまで間食(おやつ)の扱い。夕飯は朝予約した宿で用意されている。

 その後も様々な話をして盛り上がり、結局1時間ほど滞在してしまった。靴下も乾いた。 店の御主人は山に登る人らしく、登山用の靴下を一足・それからちょっとした備品を譲ってくださった。 助かりました。ありがとうございました。

 奈良井宿を出発。中山道を旅するものとして楽しいひと時を過ごせたが、3月の雨の時に来るところではないのもまた事実。 ぜひまた暖かい晴れている日に来て、観光をゆっくりしたい。 ここから今日の目的の洗馬まで17kmほど。ここからは下り坂なので、体力はいらない。

 奈良井の駅を過ぎれば、すぐに木曽平沢の駅が。平沢は間の宿で、木曽漆器で有名な漆工町。 街並みも妻籠や奈良井と同じように、重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に指定されている。 今回は時間がなく、旧道に入らずに木曽国道を走ったので見ずに通過してしまった。 少しだけでも寄ればよかったかもしれない。

 ライトをつけないと先が見えないくらい暗くなってきたので、とにかく歩道をスピードを落として進む。 上りは体力が必要だが、下りは精神力が必要だ。 そうして注意を払って下っていけば、贄川の宿場が少しずつ近づいてくる。


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