西松井田駅の入り口までやってきた。このあたりから先が、松井田の宿場があった辺りである。
松井田宿に宿泊する旅人はあまり多くなかったようだ。 江戸へ向かう“下り”の旅人は、碓氷峠越えの先の坂本宿に泊まる旅人が多かったため、関所通過すぐの宿場泊の旅人はどうしても少なくなる。
一方、信州・京方面へ向かう“上り”の旅人は、面倒な手続きがある碓氷関所をとっとと通過したがったようであったため、松井田宿は通過するものが多かった、という訳である。
その代わり松井田宿は、商人の宿や牛馬を扱う宿が多かった。特に、江戸に運ばれる信州の年貢米の中継地点として栄えた宿場であった。
現在の松井田は、江戸時代当時の遺構はないが、なんとなく旧街道の雰囲気が残っている。松井田の地域にある寺院・神社が、昔は大いに栄えたことを教えてくれる。
その中の一つが、街道の左手すぐのところにある、松井田八幡宮である。この神社に寄ろうと思っていたのだが、いつの間にか通り過ぎていたことに気づく。久々に、来た道を戻ることになってしまった。
500mほど戻って、なんとか松井田八幡宮に辿り着いた。いかにも昔から鎮座していたと言わんばかりの、厳しさと優しさと漂っていた…と言えば雰囲気が伝わるだろうか。少なくとも江戸時代初期にはすでに神社があったようである。
松井田八幡宮の後は、再び松井田の街中をのんびりと通過していく。
松井田から先も、碓氷峠からの下りは続く。松井田宿から安中宿までの3里ほどで、150mほど下る。松井田から先の旧中山道は、国道18号と比べると交通量も多くなく、快適な道であった。
20分ほどで、かつて杉並木があった場所までやってきた。現在、杉はほぼ残っていないが、若木も植えられており、杉並木の復活の動きがあるようだ。
次の安中宿は、この交差点からおよそ1.5kmほど。15時を過ぎ、かすかに黄昏が近づいてきた気がする。