戻って、旧道の近くの真っ暗な道を走ること10分ちょっと。群馬県最後の宿場、新町宿に到着。本陣の跡には、木の標だけがあった。
この建物は、明治天皇の地方巡幸の為に造られた屋敷である。その屋敷をしばし観察。周りは住宅街であるからか、その屋敷だけ異様に暗い印象を受けた。
隣接する公衆トイレで用を済ませた後、出発。 なお後になって、現在の新町には、某高級アイスクリームの、世界に4つしかない工場のうちの1つがある、知る人ぞ知る街であることを知った。
宿場から10分弱で、群馬と埼玉の県境の神流川まで来た。 読み方は「かんながわ」。富山の神通川に引きずられて、神流川を「じんりゅうがわ」だと思っていたことがあったが、それは間違いだった。
この神流川沿いでは、江戸の始まる20年ほど前に、合戦があった。橋を渡る直前に、合戦の大きな記念碑と説明版があった。
この説明版によると、ここで天正2年(1582年)に起こった「神流川の戦い」は激戦だったようで、特に上州軍は1万5千のうちの4千近い兵を失ったとあった。 死亡率は25%ほど……恐ろしい話である。
そして、橋を渡る。当然と言えば当然であるが、危険な車道ではなく、安全な歩道を通る。夕方の車通りが多い時間帯なのか、車通りが多かった。 真っ暗で時刻を忘れそうになるが、まだ午後6時なのだ。
無事に埼玉県入りを果たす。旧国名で考えると、江戸日本橋と同じ、武蔵国に入ったこととなる。
次の本庄宿まで6kmほど。上里町を走っていく。この暗さでは旧道を進むと迷いかねないので、安全策をとり、ここからは新道(国道17号)を進むことにした。
国道17号を進む限り、迷うことはない。関東平野なので、アップダウンもない。精神的に優しいナイトランである。
疲れているはずなのだが、そこそこ気分がハイになってきている。マラソン選手が長時間走り続けた後に訪れるという、ランナーズハイと呼ばれる恍惚感を生じる状態になりかけているのかもしれない。
そんな状態で、本庄市に入る。