中山道(後半)自転車旅 プロローグ
日光・奥州街道自転車旅から3ヶ月。季節は夏から秋になっていた。 後期の講義が始まり早1ヶ月半。私は大学生としての日常生活を送っていた。 この時期の学生は、そわそわしている人が多い。 目の前に迫った、大学祭を楽しみにしている人が多いためであろう。 私の通っている大学は、11月下旬の数日間に大学祭があるのだ。 その間は講義は休みになり、大学はお祭りムードに包まれる。 なおこの時期、大学祭の準備のために、講義に来なくなる人もいるようないないような…… そして私も同様にそわそわしていたが、それは大学祭のためではなく、計画している中山道後半自転車旅のためであった。 3か月前に東武線の特急の車内でぼんやりと考えていた、五街道で残す中山道下諏訪宿〜日本橋間の自転車旅を、大学祭の時にするというもの。 その後、自分の予定等をじっくり検討した結果、それが最適であると判断に至った。 大学祭はこれまでの2年間、模擬店を出したり展示を回ったりしたので、今年はいいという気持ちもあった。 そんな感じで、私は普段の生活を送りながらも、街道自転車旅の準備を少しずつ進めた。出発の日を楽しみにして… 2014年11月21日。ようやくその日がやって来た。 時刻は朝の7時20分。私は見慣れた三条大橋の弥次喜多像の前にいた。 天気は快晴。最後の五街道自転車旅の旅立ちには、もってこいだ。 ただし、この日自転車で走るのは草津宿まで。 本当は下諏訪宿までもう一度走るのが望ましいのだろうが、時間と体力を鑑みた結果だ。 草津宿までなのは、どうしても「草津宿通過証」を手に入れたかったから。 中山道・甲州街道自転車旅でも入手した、草津宿街道交流館で手に入るアレである。 草津宿から下諏訪宿までは、鉄道で一気に下諏訪へワープ。 折角なので、鉄道でも旧中山道に近い、 【草津】→【岐阜】→【美濃太田】→【多治見】→【塩尻】→【下諏訪】 という、東海道線・高山線・太多線・中央西線・中央東線経由で下諏訪に向かうことにした。 後から振り返ると、近江八幡〜米原間は、近江鉄道を使えば、武佐宿・愛知川宿・高宮宿・鳥居本宿の4宿も辿ることができたので、そちらのほうが面白かったかもしれないが。 2時間半ほどかけ、三条大橋〜草津宿の旧東海道を忠実に辿る。 草津宿に到着後は、草津宿本陣および草津宿街道交流館を見学し、今回も「草津宿通過証」をゲットした。
そして、東海道と中山道の追分を改めて訪れた後、草津駅へ。 自転車を分解し、当初の予定通りの米原方面の新快速に乗り込む。 車内で、草津駅前で購入した草津名物うばがもちを食す。 途中で、乗り換える予定だった列車が1本運休になるトラブルが発生。 その後の乗り継ぎが上手くいくか、少し心配になる。 特に、中津川〜塩尻間の普通列車は2時間に1本なので、予定の列車に乗れないと下諏訪駅への到着が大幅に遅れてしまう。 だが調べるとすぐに、1本後の列車でも下諏訪駅への到着時刻は変わらないことが分かり、安堵した。 それ以降は特に問題なく、順調に東へ進むことができた。 昼御飯として、中津川駅で駅そばを食べた。そしてそこで、前回の中山道旅では季節の関係上食べられなかった、東濃名物栗金飩を買う。 松本行の普通電車の中で、中山道木曽路を眺めながら食べることにした。 道中はほぼずっと、7か月前のサイクリングを振り返っていた。 細久手・大湫・馬籠・妻籠の宿場は鉄道のルートと大きく外れるが、それ以外はほぼ旧中山道に沿っての移動なので、 外の景色を眺めていると、7か月前の旅が思い出されるのである。
草津駅を出発してからおよそ7時間。ようやく、下諏訪駅に到着した。 この日は、3ヶ月前にできたばかりのゲストハウスに宿泊。 下諏訪駅から徒歩圏内にあるので、すぐに着いた。チェックインを済ませる。 地元の豚かつ屋で夕食を済ませ、明日からの旅の気合を入れてから、ゲストハウスに戻り、リビングルームに向かう。 リビングルームには、たくさんの人がいた。お酒を頂きつつ、色んな人と様々な話をした。 特に、バイクで旅をしている“お姉さん”との旅先での話や、地元の公立学校でALTをしている方との英語表現の話が強く印象に残っている。 そういえばこの時、とある方にブルーチーズを頂いた。あまり食したことがない食べ物だったので、新鮮な味に驚いた記憶がある。 旅人や地元の人との語らいは、この上なく楽しいひと時。 だが明日はすぐに和田峠越えをせねばならないので、名残惜しいが早めに就寝することに。 ドミトリーのベットに潜り、明日以降の新たな出会いに期待しつつ、夢の中へ… 明けて11月22日。天気は快晴。気温もこの時期にしては暖かく、サイクリング日和と言えるだろう。 朝食として、前日にスタッフさんに教えてもらった、朝からやっているゲストハウス近くのパン屋でパンを3つ購入。ゲストハウスに戻って、食す。 旅先ではどうしてもコンビニのパンが多くなってしまうが、やはりパン屋のパンは最高。 前日話したバイクで旅をしている“お姉さん”を見送ってから、自分も出発を決意する。 去り際、スタッフさんに丁寧にお礼を言う。ここのゲストハウスは非常に居心地が良かった。是非また来たいと強く思った。 ゲストハウスから自転車で2・3分のところにある、中山道と甲州街道の分岐点へ。私は、もうすっかり旅人の気分だ。 |
中山道表紙 中山道 和田峠越えへ